ゴドルフィンのエース候補に世代初のS級評価!/丹下日出夫
【丹下日出夫のPOG手帖】『POGの王道』でおなじみの丹下日出夫が、ダイジェスト映像とともに週末に行われた全2歳戦のなかから、今後クラシック戦線で有力になるであろう若駒たちをピックアップしてご紹介! 2歳世代初の重賞・函館2歳Sで新種牡馬のキズナ産駒がいきなり重賞初制覇を果たすなか、ついにS級評価を獲得したゴドルフィン所有馬が! 「もしかしたら、とんでもない大物かも」とはやくもダービーを意識させる新鋭を中心に、今週は計8レースと内容盛りだくさんでお送りします。(※評価はS〜Eの6段階)
ダーリントンホール(牡・New Approach×Miss Kenton)
■21日(日):函館5R・新馬/芝1800m/1分49秒8
JRAの調教動画を見ていたら、ミョーに艶も迫力もある馬が、函館のWをサクサクと走っている。New Approachの仔は日本で何頭か見ているが、その父ガリレオより胴伸びがよく、首差しから背中のラインが秀逸な仔が多いな。ごく近親にオセアニアの長丁場の雄クロスカウンター(メルボルンC優勝)の名が連なり、バチンと張った516キロの大型馬。走りそうだな――ひょっとしたら、ゴドルフィンのエース格かもしれない。
事前にもうちょっと研究しておくべきだったか(笑)。いや、ふたを開けてびっくりというよりはカンドー。
1000m通過・62秒1のスローも、怒りつつも我慢。3〜4コーナーすぎ、一気に鋭角的にワープ。12秒5-11秒5-11秒6(3Fは35秒6)というレースラップを35秒4でビュンと加速。開催最終日にして時計は1分49秒8。函館開催の9Fデビュー組のなかでは、文句なしの最上位。
もしかしたら、とんでもない大物かもしれない。出走すれば札幌2歳の主力級でもあるが、気の早い人はダービーという言葉も口にしていた。【評価S/適性・芝2400m】
ビアンフェ(牡・キズナ×ルシュクル)
■21日(日):函館11R・函館2歳S(GIII)/芝1200m/1分9秒2
デビュー戦の函館・芝1200mは稍重で1分10秒9(2着)。続戦は稍重で1分10秒0に更新、この持ちタイムなら十分2歳Sで勝負になる。
半姉ブランボヌール(父ディープインパクト)は、函館2歳S優勝、阪神JF3着。生産者はノースヒルズ、父はキズナ、母の父はサクラバクシンオーなど、函館2歳Sを優勝すべきカードがズラリ。
ゲート入りに手間取り、ダッシュがつかない。最内枠から気合をつけ、前半3F・33秒6という流れを追いかけていったが、直線に入ると、追いかける馬たちももう脚がない。洋芝、平坦も向いていたにせよ、2着には1.3/4馬身差をつける完勝。
距離は7Fまでかなとも思うが、6Fのオープンや重賞で、今日と同じ場面を、これからも幾度か目にするように思う。【評価C/適性・芝1200m】
ラインベック(牡・ディープインパクト×アパパネ)
■20日(土):中京9R・中京2歳S(オープン)/芝1600m/1分36秒5
今日も大事にパドックは二人引き。マイナス6キロながら、細くなく、キチンと歩けている。
ポンと好スタート、他がくるのをジンワリと待ち、前半のコース取りは内より。3コーナーすぎ外目に持ち出し、正攻法の構えで直線へ。11秒6-11秒6-12秒5(3Fは35秒7)という上がりを、自身35秒3でパンチアウト。一生懸命、真面目だね。
ただ時計は1分36秒5。このコラムにあるように、土曜日・2歳芝マイルが他2鞍あったが、3Fの並び方は違うが、3頭の上がりは35秒3〜35秒4だった。
ラップ内容にまだ際立った感触はないけれど、まずはオープン勝ちで2勝。クラシックの権利取りは済ませた。新馬の時も書いたが、首は水平。距離は延びても大丈夫。【評価D/適性・芝1800m】
ヒシタイザン(牡・トーセンホマレボシ×サンキュースマイル)
■20日(土):中京1R・未勝利/芝1600m/1分35秒6
6月の阪神・芝1400〜1800mの上位馬、そして中京1400mの新馬戦の上位馬が集結。けっこうメンバーレベルは高い。
前半1000mは60秒フラット、いつでも前を交わせる位置をとる。直線ゆるゆると先頭、左にモタれたりふらふらしながらも、後続を2馬身近く封印。最終週のパワー馬場で、上がりのレースラップは12秒0-11秒5-12秒1(3Fは35秒6)、自身の上がりは35秒4。時計も1分35秒6にまとめた。
むちっと張った、506キロの大振りな馬体は、どこか祖母スマイルトゥモロー(オークス)を思い出させる。
さて、体重はどれくらいが理想なのか。距離のマキシマムや、ダート適性など、いい意味で楽しめる課題多し。【評価D/適性・芝・ダート1800m】
マイネルグリット(牡・スクリーンヒーロー×マイネショコラーデ)
■20日(土):中京5R・新馬/芝1600m/1分36秒6
祖母はコスモヴァレンチ(小倉2歳S)、母は函館2歳S2着。母の弟ウインムートは、交流重賞2勝。この一族の活躍度や勝ち上がり率は、ちょっとすごい。
スクリーンヒーロー産駒の本馬は、474キロの四肢頑丈な栗毛。「マイネル」系とスクリーンヒーローは、育成や調教の意図がかみ合うのだろう。母系のみならず、このコンビも成功例が多い。
重馬場条件下で、1000m通過・60秒4-1400m通過・1分24秒2という平均ペースを踏み、11秒9-11秒9-12秒4(3Fは36秒2)というレースの上がりを35秒3で寄り切り。
高速決着が課題にはなるが、距離1F延長には融通が利きそう。将来的にはダート転向も一考の余地あり。【評価D/適性・芝・ダート1600m】
ペールエール(牡・ダイワメジャー×アピールII)
■20日(土):中京6R・新馬/芝1400m/1分23秒2
一番仔タングルウッドは1勝、二番仔マロリンは現在未勝利。ダイワメジャー産駒の3番仔は、500キロの肉厚。まだ下腹に余裕があり、思いのほか、交わすまで、交わしてからもジリジリだったが、上がりラップは推定12秒0-11秒5-11秒3(3Fは34秒8)。1分23秒2という決着タイムも、馬場差2秒を考慮すればマズマズ。
2歳の中京シリーズは、ダイワメジャー産駒の快進撃が続き、勝ち上がった馬たちはほとんどがオープン級。同馬の仔たちを、どう身体など造って送り出せばいいのか。昨年のアドマイヤマーズの出現で、一年であっという間に、いいお手本ができたんだなぁ。【評価D/適性・芝1400m】
ブラックホール(牡・ゴールドシップ×ヴィーヴァブーケ)
■20日(土):函館1R・未勝利/芝1800m/1分51秒3
祖母はブルーリッジリバー(桜花賞2着)。前半1000mは62秒7のスロー、道中の反応は押っつけゝ。スタート前、蹄鉄を打ちかえた影響もあったのかな?
しかし、直線入り口のコーナーリングは迫力十分。12秒2-11秒9-11秒9(3Fは36秒0)という上がりを35秒7で加速。422キロと小柄だが(ゴールドシップというよりステイゴールドに似ている?)、グンと二枚腰が使えた。
性格もそれなりに従順。クラシックロードの意外な穴馬――おもしろいマラソンランナーになるかもしれない。【評価B/適性・芝2200m】
ロールオブサンダー(牡・エピファネイア×ミッキーハナコ)
■21日(日):中京5R・新馬/芝2000m/2分3秒9
前半1000mは62秒6のスローで展開。しかし、湿り気の多い稍重。10Fの中距離戦とあってはピッチも上がりにくく、後半4Fは12秒3-12秒4-12秒1-12秒2(3Fは36秒7)。持久力型のレースラップを、ジワリゝと36秒0で追い上げ、後続を2馬身半と振り切った。息長く脚を使えるパワーが持ち味なのだろう。
ちなみに、ひとつ前の3歳未勝利の芝2000mの勝ちタイムとは0秒6差。2分3秒9という時計は、ずば抜けて速くはないけれど、レベルは低くない。
祖母サウンドザビーチは7勝(TCK女王盃)、母の弟スマハマは、つい先日・名鉄杯(リステッド)を楽勝。芝でスピード不足を感じても、ダート路線に切り替えれば、速攻でオープンに到達。来年の今頃は大井のJDDを走っているかもしれない。【評価D/適性・ダート1800m】
(文中敬称略・監修:丹下日出夫)
2019年7月22日(月)
【丹下日出夫のPOG手帖】『POGの王道』でおなじみの丹下日出夫が、ダイジェスト映像とともに週末に行われた全2歳戦のなかから、今後クラシック戦線で有力になるであろう若駒たちをピックアップしてご紹介! 2歳世代初の重賞・函館2歳Sで新種牡馬のキズナ産駒がいきなり重賞初制覇を果たすなか、ついにS級評価を獲得したゴドルフィン所有馬が! 「もしかしたら、とんでもない大物かも」とはやくもダービーを意識させる新鋭を中心に、今週は計8レースと内容盛りだくさんでお送りします。(※評価はS〜Eの6段階)
ダーリントンホール(牡・New Approach×Miss Kenton)
■21日(日):函館5R・新馬/芝1800m/1分49秒8
JRAの調教動画を見ていたら、ミョーに艶も迫力もある馬が、函館のWをサクサクと走っている。New Approachの仔は日本で何頭か見ているが、その父ガリレオより胴伸びがよく、首差しから背中のラインが秀逸な仔が多いな。ごく近親にオセアニアの長丁場の雄クロスカウンター(メルボルンC優勝)の名が連なり、バチンと張った516キロの大型馬。走りそうだな――ひょっとしたら、ゴドルフィンのエース格かもしれない。
事前にもうちょっと研究しておくべきだったか(笑)。いや、ふたを開けてびっくりというよりはカンドー。
1000m通過・62秒1のスローも、怒りつつも我慢。3〜4コーナーすぎ、一気に鋭角的にワープ。12秒5-11秒5-11秒6(3Fは35秒6)というレースラップを35秒4でビュンと加速。開催最終日にして時計は1分49秒8。函館開催の9Fデビュー組のなかでは、文句なしの最上位。
もしかしたら、とんでもない大物かもしれない。出走すれば札幌2歳の主力級でもあるが、気の早い人はダービーという言葉も口にしていた。【評価S/適性・芝2400m】
ビアンフェ(牡・キズナ×ルシュクル)
■21日(日):函館11R・函館2歳S(GIII)/芝1200m/1分9秒2
デビュー戦の函館・芝1200mは稍重で1分10秒9(2着)。続戦は稍重で1分10秒0に更新、この持ちタイムなら十分2歳Sで勝負になる。
半姉ブランボヌール(父ディープインパクト)は、函館2歳S優勝、阪神JF3着。生産者はノースヒルズ、父はキズナ、母の父はサクラバクシンオーなど、函館2歳Sを優勝すべきカードがズラリ。
ゲート入りに手間取り、ダッシュがつかない。最内枠から気合をつけ、前半3F・33秒6という流れを追いかけていったが、直線に入ると、追いかける馬たちももう脚がない。洋芝、平坦も向いていたにせよ、2着には1.3/4馬身差をつける完勝。
距離は7Fまでかなとも思うが、6Fのオープンや重賞で、今日と同じ場面を、これからも幾度か目にするように思う。【評価C/適性・芝1200m】
ラインベック(牡・ディープインパクト×アパパネ)
■20日(土):中京9R・中京2歳S(オープン)/芝1600m/1分36秒5
今日も大事にパドックは二人引き。マイナス6キロながら、細くなく、キチンと歩けている。
ポンと好スタート、他がくるのをジンワリと待ち、前半のコース取りは内より。3コーナーすぎ外目に持ち出し、正攻法の構えで直線へ。11秒6-11秒6-12秒5(3Fは35秒7)という上がりを、自身35秒3でパンチアウト。一生懸命、真面目だね。
ただ時計は1分36秒5。このコラムにあるように、土曜日・2歳芝マイルが他2鞍あったが、3Fの並び方は違うが、3頭の上がりは35秒3〜35秒4だった。
ラップ内容にまだ際立った感触はないけれど、まずはオープン勝ちで2勝。クラシックの権利取りは済ませた。新馬の時も書いたが、首は水平。距離は延びても大丈夫。【評価D/適性・芝1800m】
ヒシタイザン(牡・トーセンホマレボシ×サンキュースマイル)
■20日(土):中京1R・未勝利/芝1600m/1分35秒6
6月の阪神・芝1400〜1800mの上位馬、そして中京1400mの新馬戦の上位馬が集結。けっこうメンバーレベルは高い。
前半1000mは60秒フラット、いつでも前を交わせる位置をとる。直線ゆるゆると先頭、左にモタれたりふらふらしながらも、後続を2馬身近く封印。最終週のパワー馬場で、上がりのレースラップは12秒0-11秒5-12秒1(3Fは35秒6)、自身の上がりは35秒4。時計も1分35秒6にまとめた。
むちっと張った、506キロの大振りな馬体は、どこか祖母スマイルトゥモロー(オークス)を思い出させる。
さて、体重はどれくらいが理想なのか。距離のマキシマムや、ダート適性など、いい意味で楽しめる課題多し。【評価D/適性・芝・ダート1800m】
マイネルグリット(牡・スクリーンヒーロー×マイネショコラーデ)
■20日(土):中京5R・新馬/芝1600m/1分36秒6
祖母はコスモヴァレンチ(小倉2歳S)、母は函館2歳S2着。母の弟ウインムートは、交流重賞2勝。この一族の活躍度や勝ち上がり率は、ちょっとすごい。
スクリーンヒーロー産駒の本馬は、474キロの四肢頑丈な栗毛。「マイネル」系とスクリーンヒーローは、育成や調教の意図がかみ合うのだろう。母系のみならず、このコンビも成功例が多い。
重馬場条件下で、1000m通過・60秒4-1400m通過・1分24秒2という平均ペースを踏み、11秒9-11秒9-12秒4(3Fは36秒2)というレースの上がりを35秒3で寄り切り。
高速決着が課題にはなるが、距離1F延長には融通が利きそう。将来的にはダート転向も一考の余地あり。【評価D/適性・芝・ダート1600m】
ペールエール(牡・ダイワメジャー×アピールII)
■20日(土):中京6R・新馬/芝1400m/1分23秒2
一番仔タングルウッドは1勝、二番仔マロリンは現在未勝利。ダイワメジャー産駒の3番仔は、500キロの肉厚。まだ下腹に余裕があり、思いのほか、交わすまで、交わしてからもジリジリだったが、上がりラップは推定12秒0-11秒5-11秒3(3Fは34秒8)。1分23秒2という決着タイムも、馬場差2秒を考慮すればマズマズ。
2歳の中京シリーズは、ダイワメジャー産駒の快進撃が続き、勝ち上がった馬たちはほとんどがオープン級。同馬の仔たちを、どう身体など造って送り出せばいいのか。昨年のアドマイヤマーズの出現で、一年であっという間に、いいお手本ができたんだなぁ。【評価D/適性・芝1400m】
ブラックホール(牡・ゴールドシップ×ヴィーヴァブーケ)
■20日(土):函館1R・未勝利/芝1800m/1分51秒3
祖母はブルーリッジリバー(桜花賞2着)。前半1000mは62秒7のスロー、道中の反応は押っつけゝ。スタート前、蹄鉄を打ちかえた影響もあったのかな?
しかし、直線入り口のコーナーリングは迫力十分。12秒2-11秒9-11秒9(3Fは36秒0)という上がりを35秒7で加速。422キロと小柄だが(ゴールドシップというよりステイゴールドに似ている?)、グンと二枚腰が使えた。
性格もそれなりに従順。クラシックロードの意外な穴馬――おもしろいマラソンランナーになるかもしれない。【評価B/適性・芝2200m】
ロールオブサンダー(牡・エピファネイア×ミッキーハナコ)
■21日(日):中京5R・新馬/芝2000m/2分3秒9
前半1000mは62秒6のスローで展開。しかし、湿り気の多い稍重。10Fの中距離戦とあってはピッチも上がりにくく、後半4Fは12秒3-12秒4-12秒1-12秒2(3Fは36秒7)。持久力型のレースラップを、ジワリゝと36秒0で追い上げ、後続を2馬身半と振り切った。息長く脚を使えるパワーが持ち味なのだろう。
ちなみに、ひとつ前の3歳未勝利の芝2000mの勝ちタイムとは0秒6差。2分3秒9という時計は、ずば抜けて速くはないけれど、レベルは低くない。
祖母サウンドザビーチは7勝(TCK女王盃)、母の弟スマハマは、つい先日・名鉄杯(リステッド)を楽勝。芝でスピード不足を感じても、ダート路線に切り替えれば、速攻でオープンに到達。来年の今頃は大井のJDDを走っているかもしれない。【評価D/適性・ダート1800m】
(文中敬称略・監修:丹下日出夫)