世代初のGI馬・ダノンファンタジーの評価やいかに!?/丹下日出夫
『POGの王道』でおなじみの丹下日出夫が、ダイジェスト映像とともに週末に行われた全2歳戦のなかから、今後クラシック戦線で有力になるであろう若駒たちをピックアップしてご紹介! 世代初のGI・阪神JFを制したディープインパクト産駒のダノンファンタジーの評価は? この他、netkeibaPOGでも指名上位のブエナビスタの仔・タンタラスなどが登場!(※評価はS〜Eの6段階)
■ダノンファンタジー(牝2・ディープインパクト×ライフフォーセール)
9日(日):阪神11R・阪神JF(GI)/芝1600m/1分34秒1(良)
1000m通過は59秒1のミドルで展開。本馬を含め、有力どころは揃って後方。よくそんな度胸があるな―― たぶんみんな、個体能力や才能を、しっかりと把握できているからなのだろうか。
直線入り口、カメラが切り替わると同時に、潮のように外から押し上げてくる馬たちの脚色にあわせ、一気に競馬の風景が変わる。ラスト3F・11秒0-11秒8-12秒2(3Fは35秒0)というレースラップを、34秒0で一気差し。最後の1Fは推定11秒1〜2前後の脚を2着馬とともに使っていたか。
中間の雨が微妙に影響したのだろう。全般的にどのレースも、先週よりラスト1Fは少し時計がかかる馬場だったように思うが、1分34秒1という走破タイムは、過去10年では、第3位。
母ライフフォーセールは、ブエノスアイレス州大賞典(ダート2200m)、セレクシオン・デ・ポトランカス(ダート2000m)などのGI優勝を含め8勝を挙げた、今が盛りのアルゼンチーナ。2番仔ロクセラーナ(父キングカメハメハ)は現1勝。ディープ産駒の本馬は3番仔。ついでにひとつ下のハーツクライ産駒の弟は、セレクトで2億超え。今もこれからも目の離せない、ノーザンFのエース級繁殖です。
完成度のかなり高い馬ではあるが、母の距離戦績などを考え直してみると、決して早生ではなく距離適性にも幅があるのではないか。誇りは高く、少なくとも桜の季節までは、しっかり気高さを保ち続けていける馬でしょうね。
クロノジェネシス、ビーチサンバも、自分の能力分だけは頑張った。前半が1秒速かったらシェーングランツも、もっと際どい勝負になっていたかもしれない。【評価S/適性・芝1600m】
■エールヴォア(牝2・ヴィクトワールピサ×フィーリングトーン)
8日(土):阪神9R・エリカ賞(500万下)/芝2000m/2分1秒4(良)
四肢も首も長く、大きな背中もピンと張っている。牡馬と見間違うかの女丈夫、ウオッカの若い頃みたいだ。
秋口の阪神―― 最も高速馬場とはいえ、二走前・当該1800mを1分46秒8で走破、後続に1秒差をつける圧勝歴あり(同日古馬500万下は1分47秒0だった)。
続くアルテミスSは、1000m通過58秒7というHペースを「勝ちを取り」に行ったが、スピードと切れに勝る二頭に敗れ3着。
ただ、ジンワリとした、あの「止まり方」は、中距離馬のソレ。マイル近辺の11秒を切るような瞬発力勝負は自分の土俵ではない。
阪神JFにも一応登録したが、遠くオークスをにらみ2勝目を加算すべく、ならばと2000mのエリカ賞へ。
ハナを切るレースプランもあったか。1000m通過・1分2秒2のスローに、少し戸惑い耳をピクピク動かしてはいたが、残り4F目から11秒8にギアを上げ、11秒5-11秒3-12秒5。2歳12月に2分1秒4なら、十分合格点があげられる。持久力、ロングスパートという約束事は、しっかりと確認できた。
牝系はゴールデンサッシュ系。ちょっと苦しいが、牝馬で同族・同タイプを類推するとすればショウナンパンドラがモデルかな?【評価B/適性・芝2000m】
■エスポワール(牝2・オルフェーヴル×スカーレット)
8日(土):阪神4R・2歳未勝利/芝1800m/1分48秒8(良)
牝系の大元はバレークイーン。グレースアドマイヤを起点に、フサイチコンコルド、リンカーン、ヴィクトリーなどが登場。半兄アドミラブル(父ディープインパクト)は、青葉賞圧勝、ダービーは痛恨の3着に泣いた。
本年2歳の父はオルフェーヴル、ちょっとのんきな栗毛のお嬢さん。デビュー戦はミドルペースを生真面目に追走し、ディープ産駒にゴール前強襲をくらったが、今回はモノ見をしないよう、大事に内目に進め、5F通過・60秒7の平均ラップの上に立ち、11秒5-11秒8-12秒1(35秒4)という上りを34秒9で強襲。着差はクビだったが、2着馬とはかなり力が違っていたように思う。
タイプとすれば、マイルよりは9〜10F向き。まだ10秒台のラップ出したことがないが、父はオルフェ。どこかで想像を超える大化けがあったりして。【評価B/適性・芝1800〜2000m】
■ヴァイトブリック(牡2・シンボリクリスエス×ヴァイスハイト)
8日(土):中山7R・500万下/ダート1800m/1分54秒6(良)
10月14日の新馬戦・ダート1800mは、4角先頭集団、1分54秒4の大差勝ち。
二戦目は中山の1800ダート。スタートして2F目が11秒2、1000m通過・62秒0というHペースを、好位のポケットでスイスイ。戸崎の合図に敏感に反応、加速は滑らか。一瞬にして先行勢を捌き、ラストは流す余裕で3馬身差の快勝。走破タイムは1分54秒6。前半のペースやレースの質は異なるものの、すぐあとの古馬1000万の決着タイムは1分54秒4だった。
母は2勝、母の姉はアコースティクス(その息子はロジユニヴァース)。ソニンクを起点とした牝系は、芝・ダート、距離を問うことなく栄えている。本馬の父はシンボリクリスエス。毛色は異なるものの、同じ父をもつルヴァンスレーヴと共通点の多い馬だなと温めてきたが、合言葉はルヴァンスに追いつけ追い越せ。【評価B/ダート1600〜1800m】
■メッシーナ(牝2・ディープインパクト×シユーマ)
8日(土):中山4R・2歳未勝利/芝1800m/1分49秒1(良)
全兄はヘリファルテ、そしてブレステイキング。兄二頭はいずれ、オープンに出世するだろう。
1歳の頃は細く見せた妹も、2歳春あたりからグングンと成長。デビュー前の調教時計は、これはと目を見張った。
10月13日の東京・芝1600mの新馬戦は楽勝まであるか――なんて予想記事を書いたが、1分36秒1・上り34秒1で走って3着。残り1Fから意外に末脚はモヤモヤ。距離はもう少しあったほうがいいのかな?―― 二戦目に中山1800mを選んできたのは、兄たち同様、末脚はジワジワ。適性を見込んでのことだろう。
レースの上りを0秒5上回る、11秒台の連続ラップで力強く後続を1馬身余に完封。1分49秒1も上々。次走2〜3戦以内に、もう1勝が見える好内容だった。【評価C/適性・芝2000m】
■タンタラス(牝2・キングカメハメハ×ブエナビスタ)
9日(日):阪神4R・2歳未勝利/芝2000m/2分2秒4(良)
新馬戦の惨敗は何故だったのだろう。稽古は、やればやるほど動く―― 手応えがあるからと、攻めすぎてしまったのかなぁ…。
なんだか体を硬く見せ、勝負どころでアレアレという感じで手応えがなくなってしまったが、身体作りを見直し、気を抜かせないよう、C.デムーロも道中闘志を鼓舞。ディープ産駒2頭の牡馬が外から迫ってきたが、推定11秒8-11秒8-11秒9という二枚腰をつかってゴール前もうひと伸び。
2分2秒4というタイムおよび上りラップは、前日・土曜日のエリカ賞にはチョイ落ち。ただ、母はブエナビスタ。もしかしたら、ダートもいけそうな胸構えをしているし、ここがマキシマムというワケではない。【評価C/適性・芝&ダート2000m】
■ティグラーシャ,/b>(牝2・ディープインパクト×シーズアタイガー)
9日(日):阪神5R・2歳新馬/芝1800m/1分48秒8(良)
母シーズアタイガーは米GI・デルマーデビュータントS(AW7F)勝ち。BCジュヴェナイルフィリーズ2着、米2歳牝馬チャンピオンに顕彰された。母の兄弟スマイリングタイガーも北米GI勝ちの猛者(9勝)。
ノーザンF空港のディープインパクト牝馬のエースがグランアレグリアとしたら、早来育成のエースは本馬という評判も立ったほど。1歳時、2歳時と、ため息が出るような肌艶をもった馬だった。
ただ、430kg。うーん、もうワンサイズ大きかったら、もうちょっと早くデビューできていたら…。
なんて、1分1秒9というスローに業を煮やし、3角手前でもう先頭。ライバルたちの格好の目標となってしまったが、直線半ば、フットワークがまた一段大きくなり、ラスト3Fを11秒1-11秒6-12秒0でパンチアウト。
あの骨格では、たぶん大きくはなりきれないだろが、それでも最終的に、どこかでGIに到達するだろう、そんな可能性を秘める。
ちなみに、1歳年下のダイワメジャー産駒の牝馬も、とんでもなくいい馬なんだよね。まあ来年の話になりますが(笑)。【評価B/適性・芝2000m】
(文中敬称略・監修:丹下日出夫)
2018年12月10日(月)
『POGの王道』でおなじみの丹下日出夫が、ダイジェスト映像とともに週末に行われた全2歳戦のなかから、今後クラシック戦線で有力になるであろう若駒たちをピックアップしてご紹介! 世代初のGI・阪神JFを制したディープインパクト産駒のダノンファンタジーの評価は? この他、netkeibaPOGでも指名上位のブエナビスタの仔・タンタラスなどが登場!(※評価はS〜Eの6段階)
■ダノンファンタジー(牝2・ディープインパクト×ライフフォーセール)
9日(日):阪神11R・阪神JF(GI)/芝1600m/1分34秒1(良)
1000m通過は59秒1のミドルで展開。本馬を含め、有力どころは揃って後方。よくそんな度胸があるな―― たぶんみんな、個体能力や才能を、しっかりと把握できているからなのだろうか。
直線入り口、カメラが切り替わると同時に、潮のように外から押し上げてくる馬たちの脚色にあわせ、一気に競馬の風景が変わる。ラスト3F・11秒0-11秒8-12秒2(3Fは35秒0)というレースラップを、34秒0で一気差し。最後の1Fは推定11秒1〜2前後の脚を2着馬とともに使っていたか。
中間の雨が微妙に影響したのだろう。全般的にどのレースも、先週よりラスト1Fは少し時計がかかる馬場だったように思うが、1分34秒1という走破タイムは、過去10年では、第3位。
母ライフフォーセールは、ブエノスアイレス州大賞典(ダート2200m)、セレクシオン・デ・ポトランカス(ダート2000m)などのGI優勝を含め8勝を挙げた、今が盛りのアルゼンチーナ。2番仔ロクセラーナ(父キングカメハメハ)は現1勝。ディープ産駒の本馬は3番仔。ついでにひとつ下のハーツクライ産駒の弟は、セレクトで2億超え。今もこれからも目の離せない、ノーザンFのエース級繁殖です。
完成度のかなり高い馬ではあるが、母の距離戦績などを考え直してみると、決して早生ではなく距離適性にも幅があるのではないか。誇りは高く、少なくとも桜の季節までは、しっかり気高さを保ち続けていける馬でしょうね。
クロノジェネシス、ビーチサンバも、自分の能力分だけは頑張った。前半が1秒速かったらシェーングランツも、もっと際どい勝負になっていたかもしれない。【評価S/適性・芝1600m】
■エールヴォア(牝2・ヴィクトワールピサ×フィーリングトーン)
8日(土):阪神9R・エリカ賞(500万下)/芝2000m/2分1秒4(良)
四肢も首も長く、大きな背中もピンと張っている。牡馬と見間違うかの女丈夫、ウオッカの若い頃みたいだ。
秋口の阪神―― 最も高速馬場とはいえ、二走前・当該1800mを1分46秒8で走破、後続に1秒差をつける圧勝歴あり(同日古馬500万下は1分47秒0だった)。
続くアルテミスSは、1000m通過58秒7というHペースを「勝ちを取り」に行ったが、スピードと切れに勝る二頭に敗れ3着。
ただ、ジンワリとした、あの「止まり方」は、中距離馬のソレ。マイル近辺の11秒を切るような瞬発力勝負は自分の土俵ではない。
阪神JFにも一応登録したが、遠くオークスをにらみ2勝目を加算すべく、ならばと2000mのエリカ賞へ。
ハナを切るレースプランもあったか。1000m通過・1分2秒2のスローに、少し戸惑い耳をピクピク動かしてはいたが、残り4F目から11秒8にギアを上げ、11秒5-11秒3-12秒5。2歳12月に2分1秒4なら、十分合格点があげられる。持久力、ロングスパートという約束事は、しっかりと確認できた。
牝系はゴールデンサッシュ系。ちょっと苦しいが、牝馬で同族・同タイプを類推するとすればショウナンパンドラがモデルかな?【評価B/適性・芝2000m】
■エスポワール(牝2・オルフェーヴル×スカーレット)
8日(土):阪神4R・2歳未勝利/芝1800m/1分48秒8(良)
牝系の大元はバレークイーン。グレースアドマイヤを起点に、フサイチコンコルド、リンカーン、ヴィクトリーなどが登場。半兄アドミラブル(父ディープインパクト)は、青葉賞圧勝、ダービーは痛恨の3着に泣いた。
本年2歳の父はオルフェーヴル、ちょっとのんきな栗毛のお嬢さん。デビュー戦はミドルペースを生真面目に追走し、ディープ産駒にゴール前強襲をくらったが、今回はモノ見をしないよう、大事に内目に進め、5F通過・60秒7の平均ラップの上に立ち、11秒5-11秒8-12秒1(35秒4)という上りを34秒9で強襲。着差はクビだったが、2着馬とはかなり力が違っていたように思う。
タイプとすれば、マイルよりは9〜10F向き。まだ10秒台のラップ出したことがないが、父はオルフェ。どこかで想像を超える大化けがあったりして。【評価B/適性・芝1800〜2000m】
■ヴァイトブリック(牡2・シンボリクリスエス×ヴァイスハイト)
8日(土):中山7R・500万下/ダート1800m/1分54秒6(良)
10月14日の新馬戦・ダート1800mは、4角先頭集団、1分54秒4の大差勝ち。
二戦目は中山の1800ダート。スタートして2F目が11秒2、1000m通過・62秒0というHペースを、好位のポケットでスイスイ。戸崎の合図に敏感に反応、加速は滑らか。一瞬にして先行勢を捌き、ラストは流す余裕で3馬身差の快勝。走破タイムは1分54秒6。前半のペースやレースの質は異なるものの、すぐあとの古馬1000万の決着タイムは1分54秒4だった。
母は2勝、母の姉はアコースティクス(その息子はロジユニヴァース)。ソニンクを起点とした牝系は、芝・ダート、距離を問うことなく栄えている。本馬の父はシンボリクリスエス。毛色は異なるものの、同じ父をもつルヴァンスレーヴと共通点の多い馬だなと温めてきたが、合言葉はルヴァンスに追いつけ追い越せ。【評価B/ダート1600〜1800m】
■メッシーナ(牝2・ディープインパクト×シユーマ)
8日(土):中山4R・2歳未勝利/芝1800m/1分49秒1(良)
全兄はヘリファルテ、そしてブレステイキング。兄二頭はいずれ、オープンに出世するだろう。
1歳の頃は細く見せた妹も、2歳春あたりからグングンと成長。デビュー前の調教時計は、これはと目を見張った。
10月13日の東京・芝1600mの新馬戦は楽勝まであるか――なんて予想記事を書いたが、1分36秒1・上り34秒1で走って3着。残り1Fから意外に末脚はモヤモヤ。距離はもう少しあったほうがいいのかな?―― 二戦目に中山1800mを選んできたのは、兄たち同様、末脚はジワジワ。適性を見込んでのことだろう。
レースの上りを0秒5上回る、11秒台の連続ラップで力強く後続を1馬身余に完封。1分49秒1も上々。次走2〜3戦以内に、もう1勝が見える好内容だった。【評価C/適性・芝2000m】
■タンタラス(牝2・キングカメハメハ×ブエナビスタ)
9日(日):阪神4R・2歳未勝利/芝2000m/2分2秒4(良)
新馬戦の惨敗は何故だったのだろう。稽古は、やればやるほど動く―― 手応えがあるからと、攻めすぎてしまったのかなぁ…。
なんだか体を硬く見せ、勝負どころでアレアレという感じで手応えがなくなってしまったが、身体作りを見直し、気を抜かせないよう、C.デムーロも道中闘志を鼓舞。ディープ産駒2頭の牡馬が外から迫ってきたが、推定11秒8-11秒8-11秒9という二枚腰をつかってゴール前もうひと伸び。
2分2秒4というタイムおよび上りラップは、前日・土曜日のエリカ賞にはチョイ落ち。ただ、母はブエナビスタ。もしかしたら、ダートもいけそうな胸構えをしているし、ここがマキシマムというワケではない。【評価C/適性・芝&ダート2000m】
■ティグラーシャ,/b>(牝2・ディープインパクト×シーズアタイガー)
9日(日):阪神5R・2歳新馬/芝1800m/1分48秒8(良)
母シーズアタイガーは米GI・デルマーデビュータントS(AW7F)勝ち。BCジュヴェナイルフィリーズ2着、米2歳牝馬チャンピオンに顕彰された。母の兄弟スマイリングタイガーも北米GI勝ちの猛者(9勝)。
ノーザンF空港のディープインパクト牝馬のエースがグランアレグリアとしたら、早来育成のエースは本馬という評判も立ったほど。1歳時、2歳時と、ため息が出るような肌艶をもった馬だった。
ただ、430kg。うーん、もうワンサイズ大きかったら、もうちょっと早くデビューできていたら…。
なんて、1分1秒9というスローに業を煮やし、3角手前でもう先頭。ライバルたちの格好の目標となってしまったが、直線半ば、フットワークがまた一段大きくなり、ラスト3Fを11秒1-11秒6-12秒0でパンチアウト。
あの骨格では、たぶん大きくはなりきれないだろが、それでも最終的に、どこかでGIに到達するだろう、そんな可能性を秘める。
ちなみに、1歳年下のダイワメジャー産駒の牝馬も、とんでもなくいい馬なんだよね。まあ来年の話になりますが(笑)。【評価B/適性・芝2000m】
(文中敬称略・監修:丹下日出夫)